第3回税収弾性値予測
コンテスト2025
【表彰式レポート】
2025年10月21日、「2025年度 税収弾性値予測コンテスト」の表彰式が開催されました。今年度も多くの優れた予測が寄せられ、経済分析の精度と洞察力が光る結果となりました。
■結果発表
| 順位 |
氏名・所属 |
| 第1位 |
陳涛様(創価大学大学院経済学研究科経済学専攻(修士課程)1年)
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| 第2位 |
佐藤信太郎様(横浜国立大学大学院先進実践学環出身)
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| 第3位 |
永濱利廣 様(第一ライフ資産運用経済研究所経済調査部首席エコノミスト)
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授賞式では、第1位の陳涛様に、コンテスト参加の経緯や予測手法についてご紹介いただきました。学生参加者による緻密な分析と予測プロセスは高く評価され、未来を見通す力を讃える会となりました。
なお、景気循環学会部会 高圧経済研究部会では、引き続き第4回税収弾性値予測コンテス2026を開催いたします。
第4回税収弾性値予測コンテスト2026 | 景気循環学会部会 高圧経済研究部会
皆様からの応募を心よりお待ちしております。
■表彰式
■受賞者コメント
第1位 陳涛様(創価大学大学院経済学研究科経済学専攻(修士課程)1年)
このたびは、税収弾性値予測コンテストにおいて賞をいただき、誠にありがとうございます。結果を知ったときは正直驚きましたが、自分なりに取り組んできたことを評価していただけたようで、率直にうれしく思います。
私は中国の大学で経済統計学を専攻していました。学部生の頃、中国経済について考えるなかで、日本がどのように経済成長を遂げ、その後の変化にどう向き合ってきたのかに関心を持ったことが、日本経済を学び始めたきっかけです。
来日後、授業で景気循環を学ぶ機会があり、そこから景気の変動が税収や財政とどう結びついているのかについても考えるようになりました。このコンテストを知った際、これまで学んできた統計の知識を用いて、実際の日本経済を分析してみたいと思い、応募しました。
予測にあたっては、過去の税収弾性値から代表的な水準を導き出す方法と、GDP・物価・賃金・企業収益を用いた回帰分析という、二つのアプローチを試みました。過去データによる検証結果も踏まえながら、両者の予測値を同じ重みで組み合わせ、最終的な数値としました。一つの問題を異なる二つの方法で考え、その結果を比較できた点が、今回の分析でもっとも興味深いところでした。
実際に取り組んでみると、データを探し、統計の対象期間や対象範囲を揃える作業に、想定していた以上に時間がかかりました。予測値が実績に近かったことは自信につながりましたが、受賞後に改めて分析を見直すなかで、データの選び方など、まだ改善の余地がある点にも気づきました。そうした反省点も含めて、今回の経験を今後の研究に生かしていきたいと考えています。
最後になりますが、このような機会を設けてくださった皆様に、心より御礼申し上げます。
第2位 佐藤信太郎様(横浜国立大学大学院先進実践学環出身)
この度は税収弾性値予測コンテストにて栄誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。私は大学院において、コロナ期における米国のインフレ率予測をテーマに研究し、マクロ経済予測について学んできました。これまでご指導いただいた先生方には、改めて深く感謝申し上げます。
今回の予測方法は、主観予測をアンカーとし、利用可能な情報やデータをもとに自分なりの補正を加えるというシンプルなものです。
・名目GDP
ESPフォーキャスト調査や各金融機関による予測では、2025年度の名目GDPの成⻑率はおおむね4%と見込まれていました。これらの予測を参考にしつつ、当時利用可能であった2025年10−12月期のGDP一次速報までの実績値なども踏まえ、2025年度の名目GDPを668.2兆円と予測しました。
・2025年度税収
税収に関しては、財務省が毎月公表している「租税及び印紙収入、収入額調」を主に使用し、以下の二段階で予測値を算出しました。
第一に、予測のアンカーを設定しました。日本の税収については、GDP予測のように⺠間機関による予測値が数多く公表されているわけではありません。そこで、財務省が公表する「予算額」と「補正後予算額」を候補とし、より新しい情報を反映している補正後予算額をアンカーとして採用しました。ただし、過去の補正後予算額と最終的な税収実績を比較すると、実績値が補正後予算額を上回る傾向がみられました。その上振れ率は過去10年(2015〜2024年度)において平均約2.4%でした。補正後予算額80.7兆円にこの上振れ率を加味し、約82.6兆円をアンカーとしました。
第二に、当時までに公表されていた税収実績を用いてアンカーを補正しました。12月末時点における税収の累計は約42.25兆円でした。この累計額に加え、過去における翌年1月以降の税収の推移や、2025年度の各種経済指標にみられた名目ベースでの堅調さを踏まえると、82.6兆円には到達する可能性が高いと判断しました。むしろ、そこからの上振れも見込むのが妥当と判断し、83兆円を最終的な予測値としました。
今回の予測を振り返ると、一定の成果を得ることができた一方で、まだ多くの改善余地があると感じています。特に税収予測の精度をさらに高めるためには、個別税目の動きや日本の税制について、より深く理解する必要があると感じました。
今回のコンテストは、自分の予測方法を改めて振り返り、その課題について考える貴重な機会となりました。このような機会を設けてくださった景気循環学会部会 高圧経済研究部会の皆様に、心より感謝申し上げます。今後も今回の経験を生かし、マクロ経済や財政についての理解をさらに深めていきたいと思います。
第3位 永濱利廣様(第一ライフ資産運用経済研究所経済調査部首席エコノミスト)
この度は、景気循環学会・高圧経済研究部会主催の「第3回税収弾性値予測コンテスト2025」におきまして、第3位という栄誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。主催者である高圧経済研究部会の皆様、ならびに関係各位のご尽力に心より感謝申し上げます。
税収弾性値は、単なる統計的な推計値にとどまらず、中長期的な財政見通しや「責任ある積極財政」を議論する上で極めて重要な意味を持つ基幹的なパラメーターです。近年、名目成長率の変動やインフレ局面への移行、さらには労働市場や企業収益構造の変化に伴い、税収の成長感応度は従来の前提を上回る挙動を見せる場面が増えています。こうした動態をいかに精度高く捉えるかは、現実の政策形成や予算編成の現場においても避けて通れない課題となっています。
今回の予測コンテストに取り組むにあたっては、1990年代後半以降の名目成長率と税収伸び率の単回帰分析を基に推計した過去平均の税収弾性値2.2を外挿するといった定量的アプローチをとりました。景気動向が税収に与えるインパクトを適切に見極めることの難しさを改めて痛感すると同時に、実証分析の面白さと奥深さを身をもって体験する貴重な機会となりました。
我が国経済がデフレマインドからの脱却を果たし、供給力の強化と戦略的な官民投資を通じた潜在成長率の底上げを目指す中で、税収構造の正しい把握と持続可能な財政運営の両立は、今後一層その重要性を増していきます。税収弾性値を巡る議論が、過度な固定観念に縛られることなく、最新の実証的知見に基づいた生産的な政策論議へと発展していくことを強く期待しております。
今回の受賞を大きな励みとし、今後も景気循環論および財政・マクロ経済分析の発展に寄与できるよう、理論・実証の双方において一層の研究精進を重ねて参る所存です。末筆ではございますが、本コンテストの開催にご尽力された皆様と、日頃より学術的・政策的な刺激を与えてくださる研究者の皆様に深謝申し上げ、受賞のコメントとさせていただきます。