第2回税収弾性値予測
コンテスト2024
【表彰式レポート】
2025年10月15日、「2024年度 税収弾性値予測コンテスト」の表彰式が開催されました。今年度も多くの優れた予測が寄せられ、経済分析の精度と洞察力が光る結果となりました。
■結果発表
| 順位 |
氏名・所属 |
コメント・補足 |
| 第1位 |
阿部 凜花 様(中央大学 学友会学術連盟所属経済学会 委員長)
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前回(第1回)でも優秀賞を受賞 |
| 第2位 |
藤田 信 様(青山学院大学 国際政治経済学部 国際政治学科 竹田ゼミ出身)
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| 第3位 |
松本 賢 様(クレディ・アグリコル証券会社 経済調査部 マクロストラテジスト)
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■表彰式
■受賞者コメント
第1位 阿部凜花様(中央大学学友会学術連盟所属経済学会 委員長)
この度は税収弾性値予測コンテストにて栄誉ある賞をいただくことができ、大変光栄に思います。第1回コンテストに続き2度目の受賞となり、喜びもひとしおです。2度目のコンテスト参加にあたり昨年度の反省を踏まえ、今回はより多くの情報を収集し、内容に齟齬が見られるものについては自ら精査するよう努めました。具体的な予測方法ですが、近年の経済における大きな特徴は「円安」であると考え、今回はこの「円安」に主眼を置いて各値の分析を行いました。
- 名目GDPの予測
2024年度は円安の影響により物価が高騰し、消費が縮小する可能性がありました。しかし、近年の名目賃金の上昇傾向などを踏まえると、その影響は限定的であると判断し、名目GDPを609.2兆円と予測しました。
- 2024年度の税収予測
2024年度には所得税の減税措置が講じられ、税収の減少が懸念されました。一方で、円安によるインバウンド需要の拡大や外需の増加により、企業業績は好調でした。これらの要因を総合的に勘案し、税収は例年並みの増加が見込まれると判断、75.8兆円と予測しました。
- 税収弾性値の算出
上記の値をもとに、税収の伸び率(5.1%)を名目GDPの伸び率(2.4%)で割り、税収弾性値を2.1と算出しました。
今年度の反省点として、2024年の第3四半期までに公表されたデータを十分に考慮せずに数値を導き出してしまった点が挙げられます。その結果、名目GDPの予測精度が低下してしまいました。今後はより広い視野でデータを分析し、経済の構造を丁寧に紐解いていきたいと考えています。
第2位 藤田信様(青山学院大学国際政治経済学部国際政治学科 竹田ゼミ出身)
この度は第2回税収弾性値予測コンテスト2024で第二位になることができてとても嬉しいです。第二位になれたのは二年間統計学を指導してくださった竹田憲史先生やともに勉学に励んだ皆様のおかげだと思っております。とくに竹田先生の講義がなければ、私自身統計学を学ぶ機会もなかったのでそういった意味でも竹田先生には大変感謝しております。
私が統計学を学んだきっかけは大学1年時に受けた竹田先生の経済学の講義です。わかりやすくて素敵な先生だと感じ、その先生のゼミに所属したいと考えました。実際、ゼミでの学習もとてもわかりやすく、グループワークを通して同期や先輩後輩ともに学びを深めることができました。本コンテストの参加に関しても先生のお声がけで応募いたしました。エントリー自体はそれぞれ個人で行いましたが、数値の検討方法自体はグループワークを通して視野を広げることができました。2位になることができたのは、グループの皆様のおかげでもあります。
現在私は大学を卒業し、会社員として働いております。大学で学んだ統計学の知見を活かせる機会は余りありませんが、学ぶ過程で得たグループワークの経験やデータ・数値の見方等様々なことが今の仕事にも生きていると感じています。これからもあまり統計学という学問自体を深く追求していく予定はありませんが、本コンテストで二位になれたことは私の人生の中でも大きな自信となり、キャリア形成にも生きてくると考えています。
最後になりますが、授賞式に参加できなかったことをこの場でお詫びさせていただきます。
またこのような興味深いコンテストを開いてくださった景気循環学会部会 高圧経済研究部会にも大変感謝しております。
第3位 松本賢様(クレディ・アグリコル証券会社経済調査部 マクロストラテジスト)
この度は「第2回税収弾性値予測コンテスト2024」にて表彰をいただき、誠にありがとうございます。実勢に近い予測を行うことが出来ましたことを嬉しく思います。
今回の予測の根拠といたしまして、税収に関しましては、月次データを2024年12月分まで財務省が公表しておりましたので、簡単に言えばトレンドを伸ばして算出をおこないました。以下が大まかな手順です。
- 財務省公表の月次の一般会計税収データの系列を用いて季節調整値系列を作る。
- 季節調整値を原数値で除して季節指数系列を作る。
- 季節調整値系列から、2024年度の税収伸び率のトレンドを計算し、先まで延ばす。
- 季節指数を用いて季節調整値系列を原数値に戻し、提出時点で得られていなかった2025年1月以降の税収値を求める。
- 2025年度は、提出時点で議論が活発となっていた所得税の非課税枠拡大などで税収が減少する可能性を考慮して税収の伸びを抑制し、0.7という低めの弾性値で提出いたしました。
以上の税収の試算とともに、弊社のGDP見通しを用いて税収弾性値を2024年度に1.7、2025年度に0.7と予測いたしました。
今回の試算値は財務省前提の税収弾性値1.2に概ね近い水準ではありますが、2000年度以降でみれば、弾性値は3倍程度であったと弊社では推計しております。税収はこれまでとられすぎていたことで国民負担率の上昇に繋がっており、弾性値が1程度の、経済成長に見合った税収の伸びが本来あるべき姿であると考えます。足元まで、名目成長率は伸びていながらも内需は低迷しており、大きすぎる税収を国民に還元し、経済成長に繋げる余地があることを示唆しております。弾性値が構造的に1を大きく下回るほどの状態(税収が成長率を大きく下回る)にならない限りは、減税等に対するポピュリズム批判は当てはまらないのではないでしょうか。税収弾性値が構造的に1程度となるような財政運営がなされることを今後期待しております。
改めまして、この度は当コンテストを開催いただき、また、表彰をいただき、大変ありがとうございます。財政政策やマクロ経済安定化政策についての議論を深めるうえで大変意義深い機会であったと感じております。今後も当コンテストが継続され、周知されていくことで、コンテストの理念がより広まっていくことを祈念しております。