第1回税収弾性値予測コンテスト2023(2023年度の税収弾性値、一般会計税収、名目GDPの予測)の受賞者は同率1位で
阿部凜花様(中央大学学友会学術連盟所属経済学会 副委員長)
岩下隆成様(国土交通省国土政策局総合計画課)
大藤新様(元クレディ・アグリコル証券会社)
を優秀賞とすることに決定いたしました。
以下、選考過程を説明します。
今年度の予測においては、2022年度のGDPが改訂されたこと(「建設総合統計(令和6年4月分)の公表を受けた 四半期別GDP速報(2024年1-3月期2次速報(改定値))の公表について」内閣府、令和6年6月25日)と税収弾性値が0.249と予想外の低さになったという事情があります(これはGDPの改訂前の数字から計算したものです。2022年度の税収弾性値は2.6でした)。
建設総合統計の誤りは2020年度までさかのぼってGDPに影響を与えていますが、これは予測コンテスト応募時点では知り得ないことでしたので、改訂前の2022年度の数値を前提に税収弾性値の予測を評価することにいたしました(違いはわずかでしたので、受賞結果は改訂後の値で評価しても変わりませんでした)。
まず、予測の税収、名目GDPの伸び率から税収弾性値を計算して、予測の税収弾性値が定義と大きく離れた方々を除外しました(税収弾性値の定義は、税収の伸び率÷名目GDPの伸び率)。次に、税収弾性値、税収、名目GDPの予測値が実績値と近い方を選びました。税収弾性値の予測が困難であったこと、税収弾性値、税収、名目GDPの予測値のそれぞれの正確さの総合的評価が難しかったことから、3人の方を同率一位といたしました。
予測の税収弾性値が定義と大きく離れた方々を除外して、名目GDPと税収の予測を散布図にしますと図1のようになります。右下の赤色の点が今回優秀賞に選ばれた方々です。右上には名目GDPをかなり正しく予測されたが、税収を過大に予測された方々がいます。この方々は税収弾性値を2程度と予測された方々です。このグラフを見ても、今回の税収弾性値の低下が意外で予測することが難しかったことが分かります。
予測と実績との差をパーセントにして示したのが次のグラフです。左下の赤い点が、実績との乖離の小さかった方と分かります。左上の方々は名目GDPをかなり正しく予測されましたが、税収弾性値を2程度したために、税収を過大に予測された方々です。
税収弾性値の予想外の低さにより、予測が困難だったと思います。この中で受賞された3人の方は、素晴らしい洞察力を示されたと思います。大変おめでとうございます。